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工事内容の違いが返金問題になる境界線
返金請求テンプレの全体ガイド
工事が「完成している」ことと、「契約どおりに完成している」ことは別です。完成していても、契約書・見積書・仕様書に記載された内容と違う状態で引き渡されているなら、返金(減額)や是正(やり直し)を求める余地はあります。焦点はシンプルで、①契約上の約束が何か、②完成物がどう違うか、③その変更に合意があったかです。
業者がよく使う反論が「仕様変更です」「現場判断です」です。ただし、あなたが変更を依頼していない/同意していないのに、材料や数量、仕上げが変えられているなら、それは“正当な変更”ではなく、契約違反として整理できる可能性があります。逆に、こちらが口頭でも変更を了承していたり、追加費用の合意がある場合は、返金の主張が弱くなります。
ここで誤解しやすいのは、「細かい違いは無視されるのでは」という不安です。実務的には、**“細かいかどうか”よりも、“契約で特定できるか”と“合意の有無”**が重要です。型番、材料、数量、等級、施工範囲など、契約資料と突合できる違いは争点にしやすいです。
契約書と見積書の工事項目を理解する
まず「どこまでが契約工事か」を特定します。見積書は参考程度、と思われがちですが、リフォームや工事契約では、見積書・仕様書・図面が“工事内容を特定する資料”として機能します。つまり、**工事項目名・数量・仕様(材料、型番、グレード、施工範囲)**が書かれているなら、それが比較の土台になります。
確認ポイントは次の3つです。
- 工事項目:何をやる契約か(例:床張替、外壁塗装、設備交換)
- 数量・範囲:何㎡、何本、どこからどこまで、何箇所
- 仕様:材料・型番・等級・塗料種別・厚み・メーカー等
この“契約の骨格”が固まっていないと、相手に「それは含まれていない」で逃げられます。
仕様変更と契約違反を切り分ける
仕様変更が正当かどうかは、結局「合意」があるかで決まります。現場判断は万能ではありません。合意のない変更は、契約違反として整理できる可能性があります。
切り分けの基準はこれだけです。
- 合意変更:変更依頼がある/見積変更・追加契約がある/メールやLINEで承認している
- 一方的変更:事前説明なし/完成後に初めて知らされる/書面も履歴もない
誤解しやすいのは「口頭で言われたから仕方ない」です。口頭説明があっても、こちらが同意した証拠がなければ、少なくとも争点になります。逆に、こちらが「それでOK」と言ってしまっている場合は、返金よりも“追加費用の妥当性”や“説明不足”の争点に寄せたほうが通りやすいこともあります。
完成状態と契約内容を見比べる
完成物と契約内容の差を、“比較表”の形に落とします。ここが雑だと、全部が感情の話に見えてしまいます。
- 契約:〇〇(例:フローリング材 A・厚み12mm・メーカー〇〇)
- 実物:△△(例:別メーカーB・厚み8mm・型番不明)
- 影響:耐久・見た目・性能・保証・メンテコスト等(必要なら)
違いは「材料」「工程」「範囲」のいずれかに分類できます。特に材料違い(グレードダウン)は返金(減額)と相性が良い争点です。
返金請求が通りやすくなる状況の揃い方
返金請求前に確認すべきチェックリスト
返金(減額)が通りやすいのは、差が明確で、合意がないことが整理でき、さらに返金額の算定根拠が示せるときです。感情的に訴えるのではなく、「契約→実物→合意なし→金額」の一本線にします。
違いが分かる資料を客観的に残す
客観資料が交渉の軸です。最低限これを揃えます。
- 契約資料:契約書、見積書、仕様書、図面、変更見積(あれば)
- 完成物の証拠:写真・動画(型番ラベル、材料刻印、施工範囲が分かるもの)
- やり取り履歴:メール、LINE、打合せメモ、議事録、録音(可能なら)
「口頭説明で十分」はほぼ負け筋です。資料があると、相手の“仕様変更”主張を崩しやすくなります。
変更説明の有無と時期を読み取る
説明の有無と時期が判断材料です。特に強いのは、着工前や施工中に説明がなかったケースです。完成後に初めて説明されるなら、「同意が成立していない」方向に整理しやすいです。
時系列はざっくりでOKです。
- 〇月〇日:契約(仕様〇〇で合意)
- 〇月〇日:施工開始
- 〇月〇日:変更説明なしのまま施工
- 〇月〇日:完成後に相違を発見/説明を受ける
“いつ知ったか”が明確だと、黙認=同意の反論を避けやすいです。
合意変更と一方的変更を見極める
一方的な変更は返金理由になり得ます。黙認=同意ではありませんが、相手はそう言います。こちらは「同意を示す行為がない」ことを淡々と書きます。
同意があると見られやすい例も書いておきます(読者の事故防止用)。
- 変更見積にサインした/返信で了承した
- 追加費用を支払った
- 変更後の材料で良いと言った記録が残っている
これがある場合は、「説明不足」「必要な情報の不提示」「誤認」など、主張の立て方を変えたほうがいいケースがあります。
返金請求の相手を誤らない考え方
契約相手を誤ると返金が進みません。現場担当に言っても、返金判断はできないことが多いです。基本は 契約書・請求書の名義 で判断します。
元請と施工会社の役割を理解する
返金請求先は原則として元請(契約主体)です。下請・職人は工事をしていても、契約当事者ではない場合が多く、返金や契約変更の決裁権がありません。まず契約主体に出し、必要なら施工会社にも“共有”として送る形が無難です。
契約名義と請求先を比較する
名義が請求先判断の基準です。
- 契約書(注文書)の相手方名義
- 請求書の発行名義(振込先口座名義)
- 連絡窓口が別会社なら、代理か下請か
紹介業者に請求できると思い込むのは危険です。紹介は窓口でも、契約当事者でなければ返金交渉は止まります。
工事内容違いの返金依頼文のテンプレート
完成していても、契約と違えば返金(減額)を求める余地があります。文面は 契約内容→相違点→合意なし→返金額→期限 の順で一本化します。
件名:契約内容と異なる工事内容に関する返金(減額)依頼(工事名/住所:〇〇)
〇〇(元請会社名/契約名義の会社名)御中
担当:〇〇様お世話になっております。〇〇(氏名)です。
貴社と締結した下記工事について、契約書・見積書(仕様書)に記載された内容と、実際の施工内容に相違が確認されたため、返金(減額)をご依頼いたします。【契約の特定】
・契約日:〇年〇月〇日
・工事場所:〇〇(住所)
・工事名/契約番号:〇〇
・契約金額:〇〇円(支払状況:〇〇円支払済)
・引き渡し日:〇年〇月〇日【契約で約束された工事内容(根拠資料)】
契約書/見積書/仕様書(〇年〇月〇日付)には、以下のとおり工事項目・数量・仕様が記載されています。
・工事項目:〇〇 数量・範囲:〇〇 仕様:〇〇(材料/型番/等級 等)
・工事項目:〇〇 数量・範囲:〇〇 仕様:〇〇【実際の施工内容との差(相違点)】
引き渡し後に完成状態を確認したところ、下記の相違が確認されました(写真・動画・現物確認記録あり)。
<相違点1>
・契約内容:〇〇
・実際の施工:△△
<相違点2>
・契約内容:〇〇
・実際の施工:△△【変更の合意がないこと】
上記相違について、着工前または施工中に、変更内容・理由・費用の説明を受けた事実はなく、また当方が当該変更に同意した記録(変更見積への署名、了承返信等)もありません。
(※もし説明があった場合:説明を受けた時期は〇年〇月〇日であり、当方は同意していません。)【返金(減額)を求める金額】
〇〇円
(算定根拠:契約仕様との差額見積〇〇円/是正に要する費用相当額〇〇円/当該相違部分の工事代相当額〇〇円 等)【回答期限】
本書面到達後〇日以内(〇年〇月〇日まで)に、返金(減額)の可否および具体的な対応方針をご回答ください。なお、期限までにご回答がない場合、または合意のない変更が解消されない場合は、記録が残る方法で再通知のうえ、第三者機関への相談等も含めて対応を検討いたします。
以上、よろしくお願いいたします。
〒〇〇〇-〇〇〇〇
住所:〇〇
氏名:〇〇
電話:〇〇
メール:〇〇
返金依頼文の提出手順と記録の残し方
相手が法人の場合の返金請求の考え方
記録が残る提出が後の対応を左右します。口頭連絡だけだと「仕様変更で済みます」で終わりやすいので、提出事実と文面を固定します。
提出方法ごとの証拠性を比較する
方法ごとに証拠力が異なります。基本は次の順で考えればOKです。
- メール:送信内容の控えが残る(添付資料の一覧も残す)
- 問い合わせフォーム:受付番号・送信控えが出るなら有効(スクショ必須)
- 書面郵送:文面が確定し、提出の事実が残る(送付記録も残す)
送るときは、契約資料・相違点の写真・比較表・時系列メモを同じフォルダにまとめ、送付日と送付先を控えます。
未対応時の対応順を見通す
連絡が来るまで待つのは悪手です。次の手を前提に、期限で区切ります。
- 期限付きの返金(減額)依頼を提出(今回)
- 期限経過後:再通知(相違点・金額・期限を再掲、記録が残る方法で)
- 反論が出たら:合意の証拠の提示を求める(変更見積・承認履歴の提出要求)
- 進展しない場合:第三者相談に向けて資料を整備(契約・写真・やり取り履歴・算定根拠)
「感情」ではなく、「契約」「相違」「合意なし」「金額」「期限」で押し切るのが一番強いです。
