目次
書面が交付されていない契約の扱い
返金請求の全体像や、どの段階でどの文書に切り替えるかを整理した返金トラブルのガイドを前提にすると、本記事の位置づけを見失いにくくなります。
契約書や重要事項説明書を受け取っていないまま契約が進んでいると、「そもそもこの契約は有効なのか」「返金を求められるのではないか」と不安になる人は少なくありません。
結論から言うと、書面が交付されていない=自動的に契約無効・全額返金とは限りません。ただし、交付義務のある書面が欠けている場合、返金請求や契約解除の余地が生じるケースは確かに存在します。
ここで重要なのは、「契約が成立しているか」と「返金を求められるか」は別問題だという点です。まずは、どの書面が交付されるべきだったのかを整理します。
交付義務がある書面を理解する
契約内容や取引形態によって、事業者に交付義務が課されている書面は異なります。代表的なものは次のとおりです。
- 契約書
- 重要事項説明書
- 特定商取引法に基づく書面
すべての契約で同じ書面が必須というわけではありません。
まずは、自分の契約がどの法制度・取引形態に当てはまるかを確認することが判断の起点になります。
書面未交付と契約成立を切り分ける
書面が交付されていなくても、契約自体が成立しているケースはあります。
口頭契約やオンライン契約では、合意が成立していれば形式上は有効と扱われることもあります。
ただし、成立していることと、返金請求ができないことは同義ではありません。
クーリングオフ制度の対象外とされた場合でも返金交渉の余地がある点は、
クーリングオフ不可と言われたときの返金交渉の考え方
と同様、制度と契約問題を切り分けて捉える必要があります。
軽微な欠落と重大な未交付を見比べる
返金請求が認められやすいかどうかは、「何が欠けていたか」によって変わります。
一部の軽微な記載漏れなのか、判断に影響する重要事項そのものが交付されていなかったのかで、対応は大きく異なります。
「どの情報が、いつ、どのように欠けていたのか」を具体的に整理することが不可欠です。
返金請求が通りやすくなる状況の揃い方
書面未交付を理由に返金請求を行う場合、主張だけでは足りません。
未交付の事実関係が客観的に整理されているほど、返金請求は現実的になります。
書面未交付を示す状況を証拠として残す
次のような情報は、書面未交付を示す資料になります。
- 書面を受け取っていないことが分かるメール履歴
- マイページや管理画面に書面が表示されていない記録
- 受領確認に関する記載が存在しない契約書面
「もらっていない」という記憶だけでなく、受領していない状況を示す材料を残すことが重要です。
契約までの経緯を時系列で読み取る
申込みから支払い、契約成立までの流れを時系列で整理します。
- 申込日
- 支払日
- 契約成立とされた時点
- 書面が交付されなかった期間
流れを整理することで、どの段階で交付義務が果たされていなかったのかが明確になります。
説明不足と単なる省略を見極める
すべての説明不足が返金理由になるわけではありません。
返金可否は、「判断に影響する重要事項が交付・説明されていなかったか」で分かれます。
単なる簡略説明なのか、契約判断を左右する情報が欠けていたのかを切り分ける視点が必要です。
返金請求の相手を誤らない考え方
返金請求が進まない原因として多いのが、請求先の誤りです。
説明をした担当者や窓口に伝えただけでは、判断が止まることがあります。
契約主体と説明者の関係を理解する
返金判断を行うのは、原則として契約主体です。
説明を行った担当者が代理であっても、最終的な返金判断権限は契約主体にあります。
契約書や申込画面に記載された事業者名を必ず確認します。
契約名義と支払先を比較する
実務上の判断基準になるのが、契約名義と支払先です。
- 領収書・請求書の名義
- クレジットカード明細の名義
支払方法ではなく、「誰と契約しているか」で請求先を判断します。
書面未交付に対する返金請求文のテンプレート
返金請求文では、書面未交付の事実・返金を求める根拠・金額・期限を明確に示します。
初動で柔らかく出す場合は、
揉めずに終わらせる返金依頼文の構成
を踏まえると、不要な対立を避けやすくなります。
以下は、そのまま提出できる前提の文面です。
〇年〇月〇日に、貴社と〇〇に関する契約を締結し、同日(または〇年〇月〇日)に代金として〇〇円を支払いました。
しかしながら、本契約に際し、本来交付されるべき契約書(または重要事項説明書)について、現時点に至るまで交付を受けておりません。
当該書面には、契約内容を判断するうえで重要な事項が含まれるものであり、交付義務が果たされていない状態で契約が進行している点について、問題があると考えております。
つきましては、上記理由を踏まえ、本契約に関して支払済みの〇〇円について返金のご検討をお願いいたします。
〇年〇月〇日までに、書面またはメールにてご回答をいただけますようお願い申し上げます。
契約内容と書面未交付の事実を特定する
請求文では、契約日と「どの書面が交付されていないのか」を具体的に記載します。
曖昧な表現では、事実確認が進みません。
返金を求める根拠を具体化する
「書面がない」という主張だけでは弱いため、交付義務がある書面であることを明確にします。
法令や契約条件に基づき、なぜ問題なのかを事実ベースで示します。
返金額と期限を明示する
返金額と回答期限は、請求の軸になります。
相手に判断を委ねすぎず、具体的な金額と期限を示すことで対応が進みやすくなります。
返金請求文の提出手順と記録の残し方
返金請求は、必ず記録が残る方法で行います。
口頭連絡のみでは、後から事実を証明できません。
提出方法ごとの証拠性を比較する
- 書面郵送:到達と内容を証明しやすい
- メール:履歴が残りやすい
スピードよりも、証拠性を優先します。
未対応時の対応順を見通す
返答がない場合に備え、再通知や第三者相談といった次の行動を想定しておきます。
「待てば解決する」と考えず、段階的に進める前提で対応することが重要です。
