目次
リフォーム工事の未完成が返金問題になるライン
返金請求すべきか迷ったときの判断フローチャート
リフォームは、途中まで工事が進んでいると「もう返金は無理」と思い込みがちです。ただ、工事が完了していない、あるいは契約で約束された状態に達していないなら、返金請求の余地は生じます。ポイントは「完成していない」の中身を、契約書・見積書・仕様書と、引き渡し時点の状態で結びつけて説明できるかどうかです。
ここでズレやすいのが、業者の「やり直すから」「後日対応する」という言葉に引っ張られて、いつまでも完了が曖昧なままになることです。引き渡しが済んでいても、引き渡し時点の状態が約束どおりでなければ争点になります。逆に、気に入らない仕上がりを全部「未完成」にすると、話がぼやけてしまいます。
まずは線引きを置きます。未施工(そもそも着手していない・部材が付いていない・工事が残っている)なのか、施工不良(施工はしたが品質や仕様が満たせていない)なのか。どちらかで、請求の組み立て方と相手の反論も変わってきます。
契約内容と工事範囲を理解する
最初にやるべきは、「どこまでが契約工事か」を特定することです。工事の話が揉めると、相手は「それは追加工事」「そこまでは含まれていない」と言いがちなので、こちらは契約書・見積書・仕様書に書かれている工事項目と範囲を先に固定します。ここが固まれば、未完成の指摘も一直線になります。
口頭の約束は含められない、と思ってしまう人もいますが、口頭説明が完全に無意味とは限りません。メールやLINE、打ち合わせメモ、図面の差し替え履歴など、書面化・記録化されていれば、約束の内容として扱いやすくなります。だから「言った言わない」にせず、記録に落とせる材料を拾います。
確認するときは、項目の粒度を揃えるのがコツです。たとえば「キッチン一式」ではなく、「型番」「天板材」「水栓」「収納」「レンジフード」など、契約資料に出ている単位に合わせていくと、相手も逃げにくくなります。
未施工と施工不良を切り分ける
未完成と不良施工では、対応が異なります。未施工は「やっていない」話なので、工事の残りを完成させるか、未実施分の返金・減額を求める筋になりやすいです。一方で施工不良は「やったが品質・仕様が満たせていない」話なので、補修・是正が中心になり、場合によっては減額や再施工費相当の返金が争点になります。
ここでありがちな誤解は、「仕上がりが気に入らない=未完成」としてしまうことです。好みの問題に寄ると、相手は「主観」として処理しやすくなります。未施工なら“存在しない・動かない・未取付”、施工不良なら“仕様と違う・寸法が違う・安全面に問題がある”など、客観で言える形に寄せます。
切り分けが難しい場合は、まずは一覧にします。
- 未施工:未取付、未配線、未塗装、未清掃、部材未納、工事未着手の箇所
- 施工不良:浮き、隙間、漏水、傷、傾き、動作不良、仕様違い、施工基準を満たさない状態
この整理ができると、後の請求文が読みやすくなります。
引き渡し状態と約束内容を見比べる
引き渡し基準と実態の差が争点になります。引き渡しが済むと「完了扱い」と受け取ってしまいがちですが、引き渡し時点で未施工が残っている、または仕様と違う状態があるなら、そこで話を止めてよい理由になります。特に「引き渡した=終わり」とされると、以降は“善意の対応”に落ちていきやすいので注意が必要です。
引き渡し状態を整理するときは、「いつ」「どの状態だったか」を固定します。引き渡し当日の写真や動画、立会い時の指摘メモ、引き渡し書類の記載(サインしたかどうか)など、時点を切れ目にする材料が大事です。相手が「後で直すと言った」と言うなら、その言葉も時系列に入れて、約束が積み上がっていることを見せます。
「引き渡されたら完了扱い」と思い込む必要はありません。完了条件が契約に書かれている場合はそれを使い、書かれていない場合でも、契約で約束された工事内容に達していないなら、未完了として整理できます。
返金請求が通りやすくなる状況の揃い方
返金請求前に確認すべきチェックリスト
返金請求は、強く抗議すれば通るものではありません。むしろ、状況が整理されているほど話が進みます。未完成工事は論点が散りやすいので、未完成箇所の客観資料、工期と対応経緯、そして補修で済む話か返金(減額)が妥当かを分けておくことが鍵になります。
ここを丁寧にやるほど、「やり直すから」「後日対応する」という引き延ばしに巻き込まれにくくなります。相手の提案に乗るにしても、こちらが“条件を整えて”受ける形にできます。
未完成箇所を客観的に残す
客観資料が返金交渉の軸になります。口頭説明だけで押すと、相手は「対応します」で逃げられます。だから、未完成箇所は写真・動画・チェック表で“残す”のが最優先です。見た目の問題だけでなく、動作不良や安全面の懸念も、記録があると伝わり方が変わります。
撮り方は凝る必要はありません。ただ、後で見返したときに「どこが」「どう未完成か」が一目で分かる形にします。具体的には、次のように残すと強いです。
- 引きの写真:場所が分かる(部屋全体・設備全体)
- 寄りの写真:未施工・不良の箇所が分かる(傷、隙間、未取付)
- 動画:動作不良や漏れ、異音など“動き”が必要なもの
- チェック表:項目名/状態/撮影日/備考(未施工か不良か)
これがあるだけで、請求文の説得力が上がります。
工期と対応経緯を読み取る
遅延や放置の経緯が判断材料になります。「待てば解決する」と思ってしまうと、いつまでも“口約束の更新”で終わります。だから、当初工期、引き渡し日、延期の回数、連絡が途切れた期間、対応が繰り返し先延ばしになっている事実を時系列で並べます。
整理の粒度は細かすぎなくていいです。むしろ、読めば分かる形が重要です。たとえば、こんな並べ方にすると破綻しません。
- 〇月〇日:契約(工期〇日、引き渡し予定〇月〇日)
- 〇月〇日:引き渡し(未完成箇所あり。〇〇は未施工)
- 〇月〇日:施工会社から「後日対応」の連絡
- 〇月〇日:再度依頼したが実施されず
- 〇月〇日:現状も未完成のまま(写真・動画あり)
この時系列があると、返金や減額の話に移る合理性が出ます。
補修対応と返金請求を見極める
やり直しと返金は別の選択肢です。補修提案が出ているなら、それを受けるべきか、返金(減額)に切り替えるべきかを見極めます。補修を断ると返金できない、という誤解もありますが、補修提案が不十分だったり、実施されないなら、返金や減額を求める方向に移る余地はあります。
判断の軸は、提案内容が具体かどうかです。「直します」だけでは弱いです。こちらが受けるなら、次が揃っているかを見ます。
- 補修対象:どの箇所を、どう直すか
- 日程:いつ着工し、いつ完了するか
- 完了基準:何をもって完了とするか
- 未実施時:どう扱うか(減額・返金に切り替える条件)
補修を受けるにしても、条件が曖昧なまま待つのは避けたほうがいいです。
返金請求の相手を誤らない考え方
返金請求の流れを最初から最後まで解説
契約相手を誤ると返金が進みません。現場の職人に言えば解決する、と思いがちですが、返金の判断や契約上の責任を負うのは、基本的に契約主体です。誰が工事をしたかより、誰と契約したか、誰名義で請求書が出ているかが軸になります。
特にリフォームは、元請がいて下請が動く構造になりやすいです。現場対応の窓口と、契約上の相手が一致しないこともあるので、名義で整理していきます。
施工会社と元請の役割を理解する
返金請求先は契約主体になります。元請契約があるなら、元請が全体の責任を負う形になりやすく、下請や職人に直接言っても返金判断ができないことが多いです。現場担当者が「やります」と言っても、契約上の対応として確定しないケースもあるので、窓口と契約主体は分けて考えます。
誤解しやすいのは、施工担当者が返金判断できると思うことです。現場の人は工事の調整はできても、金銭の判断は会社側、しかも契約名義の会社が握っていることがほとんどです。だから、請求文は“契約主体”に向けて出します。
契約名義と請求先を比較する
名義の一致が請求先判断の基準です。契約書、注文書、請求書、領収書の名義がどこになっているかを確認します。紹介業者に請求できると思ってしまう人もいますが、紹介が窓口だっただけで契約当事者ではないなら、返金請求は通りにくいです。
確認の順番はシンプルです。
- 契約書(または注文書)の相手方名義
- 請求書の発行名義(振込先口座名義も含む)
- 連絡窓口が別会社の場合、その位置づけ(代理か下請か)
名義が揃えば、請求文を出す相手も迷いません。
リフォーム未完成工事の返金請求文のテンプレート
返金請求文テンプレ完全ガイド
返金請求文は、事実・未完成内容・返金額・期限を明示した文面が必要です。丁寧な表現だけだと「順次対応します」で止まるので、契約で約束された工事内容、未完成・未実施部分、そして返金(減額)の根拠を一本の文面にまとめます。
以下は、そのまま提出できるテンプレートです。空欄を埋めて使用してください。
件名:リフォーム工事の未完成・未実施に関する返金(減額)請求の件(工事名/住所:〇〇)
〇〇(施工会社名/元請会社名)御中
担当:〇〇様お世話になっております。〇〇(氏名)です。
貴社と締結した下記リフォーム工事について、引き渡し後も契約で約束された工事が未完成・未実施の状態であるため、返金(減額)をご請求いたします。【契約の特定】
・契約日:〇年〇月〇日
・工事場所:〇〇(住所)
・工事名/契約番号:〇〇
・契約金額:〇〇円(支払状況:〇〇円支払済)
・引き渡し日:〇年〇月〇日(または引き渡し予定日:〇年〇月〇日)【契約で約束された工事内容(該当箇所)】
契約書/見積書/仕様書(〇年〇月〇日付)には、以下の工事項目が記載されています。
・〇〇(工事項目)
・〇〇(工事項目)
・〇〇(工事項目)【未完成・未実施部分(具体)】
引き渡し後に現状を確認したところ、下記のとおり未完成・未実施(または施工不良)が残っています(写真・動画・チェック表あり)。
<未施工/未実施>
・箇所:〇〇 内容:〇〇(例:未取付/未配線/未塗装 等)
・箇所:〇〇 内容:〇〇
<施工不良(仕様不一致・不備)>
・箇所:〇〇 内容:〇〇(例:仕様と異なる/動作不良/隙間・浮き 等)
・箇所:〇〇 内容:〇〇【対応経緯】
当初の工期・引き渡し予定は〇〇でしたが、〇年〇月〇日以降、貴社より「後日対応」「やり直す」との説明が繰り返され、現時点(〇年〇月〇日)でも未完成のままです。
(例:〇月〇日連絡 → 〇月〇日延期 → 〇月〇日未実施、等)【返金(減額)を求める金額】
〇〇円
(算定根拠:未実施分の見積相当額〇〇円/是正費用相当額〇〇円/追加発生費用〇〇円 など)【回答期限】
本書面到達後〇日以内(〇年〇月〇日まで)に、返金(減額)の可否および具体的な対応方針をご回答ください。なお、期限までにご回答がない場合、または具体的な履行・是正が進まない場合は、記録が残る方法で再通知のうえ、第三者機関への相談等も含めて対応を検討いたします。
以上、よろしくお願いいたします。
〒〇〇〇-〇〇〇〇
住所:〇〇
氏名:〇〇
電話:〇〇
メール:〇〇
返金請求文の提出手順と記録の残し方
記録が残る提出が後の対応を左右します。口頭連絡だけだと、「言った」「聞いてない」のループに戻りやすいです。未完成工事は、相手が“対応する姿勢”だけ見せて引き延ばすパターンがあるので、提出した事実と提出内容を固定できる方法を選びます。
ここで大事なのは、提出の証拠と、添付資料の控えをセットで残すことです。未完成箇所の写真・動画、チェック表、時系列メモがあるだけで、請求文は短くても強くなります。
提出方法ごとの証拠性を比較する
方法ごとに証拠力が異なります。状況に応じて、証拠性が高い順に寄せていきます。
- メール:送信内容の控えが残る。相手の担当が固定されているなら使いやすい
- 問い合わせフォーム:受付番号や送信控えが残るなら有効(スクショ必須)
- 書面郵送:文面が確定し、提出の事実が残る(送付記録も残すと強い)
早さだけを優先すると、証拠が残らず詰みやすいです。送付した文面、添付資料の一覧、送付日を控えとしてまとめておくと、再通知が一気に楽になります。
未対応時の対応順を見通す
連絡が来るまで待てばよい、と思うと消耗します。最初から次の手を想定しておくと、引き延ばしに耐えなくて済みます。対応順は、基本的に段階で強くしていきます。
- 期限を切った請求文を提出(今回)
- 期限経過後、記録が残る形で再通知(未完成箇所・金額・期限を再掲)
- 補修提案が出た場合は、内容と日程を具体化させたうえで受けるか判断
- 具体対応が進まない場合は、第三者相談に向けて資料を整える(契約資料・写真・時系列・やり取り履歴)
「待つ」ではなく、「期限で区切る」に切り替えるだけで、主導権が戻ってきます。
