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いじめと不登校の“優先順位”は学年で変わる話
この記事は、いじめ対応の全体像をまとめたガイド(イジメ対応の全体ロードマップ)の中で触れた「不登校・転校・適応指導教室の選び方」を、より詳しく掘り下げたものです。まず全体の流れを押さえておきたい場合は、先にロードマップを読んでおくほうが全体像がつかみやすいと思います。
いじめがきっかけで学校に行けなくなったとき、親が真っ先に気にするのは内申や進路のことになりがちです。ただ、実際にはその重要度は学年によってまったく違う。何度も相談を受けてきましたが、小学生・中学生・高校生では、メンタルの反応も制度の仕組みも別世界といっていいくらい違います。
だから、「こうしておけば正解」という一律の対応はなく、学年ごとに分けて考えたほうが、圧倒的に判断しやすくなるという前提からスタートしたほうが現実的です。
小学生は「学校に行かせる」より前に、安全を確保する
小学生のいじめは、本人がはっきり言葉で訴えられない一方で、身体症状としていきなり出ることが多いです。腹痛や頭痛、急な登校しぶりなど、ストレス反応がダイレクトに出やすい。朝の玄関で毎朝バトルになる家庭も珍しくありません。
ここで無理やり送り出すと、ほぼ確実に悪化します。
親が「しばらく学校から距離置いていいよ」と一言かけるだけで、表情がガラッと変わる子も多い。
「学校を休む=ダメなこと」という空気はいまだに残っていますが、それは大人側の価値観であって、子どもには関係ありません。まずは安全な場所に退避させることが最優先です。
一度距離を置くと、数日でけろっとして「そろそろ勉強したい」「友達に会いたい」と、子どもの側から動き出すことも普通にあります。元気になれば自分から前に進もうとする力が戻ってくるので、焦って背中を押し続ける必要はありません。
それに、小学生は適応指導教室や別室登校などの受け皿が多く、出席扱いにできる制度も整っています。転校もこの時期がいちばん柔軟にできるので、環境を変えること自体がかなり現実的な選択肢になります。
中学生は“内申”よりも“自尊心”のケアが勝る
中学生になると、親は一気に内申を気にし始めます。ただ、現実には別室登校・課題提出・通級など、学校側の救済ルートはいくつもあり、いじめをきっかけに「一気に進路が閉ざされる」というケースはそこまで多くありません。
この年代で本当に厄介なのは、自尊心が極端に傷つきやすいことです。
いじめられていることを親に知られるのが恥ずかしくて、必要なことすら話せなくなってしまう子も多い。そこで家庭で深堀りしすぎると、「また責められる」「また聞かれる」と感じて、完全に心を閉ざしてしまいます。
親としては、がっつり寄り添って聞き出すよりも、「いつでも味方ではいるよ」という距離感をキープするほうがうまくいきやすい。
いじめのことで親を不安にさせている…という自責感を抱きやすい時期でもあるので、親のほうが不安を背負いすぎない雰囲気を作るほうが、結果として子どもの体調も戻りやすくなります。
高校生は“内申”より“単位と出席日数”の世界になる
高校は、もう中学までとは別物です。
制度上のポイントは、内申よりも「単位」と「出席日数」。ここさえ押さえておけば、必要以上に絶望する必要はありません。
単位が危ない教科があっても、転校・通信制・定時制などで引き継げることが多く、ルート自体は驚くほど柔軟です。大事なのは、**「今の高校で戦い続けるのか」「一度リセットして別ルートに切り替えるのか」**を、親子で一度フラットに検討してみること。
誰もはっきり言いませんが、高校は人生の通過点にすぎません。環境を変えたほうが伸びる子も山ほどいます。実際、私の友人にも、いじめから逃げる形で一ヶ月ほど山ごもりして、その後猛烈に勉強して難関大に入った人がいます。学校に行けなかった期間も、視点を変えれば**“人生の仕込み時間”**になり得るということです。
| 学年 | 主なリスク | 最優先すべきこと | 有効な選択肢 |
|---|---|---|---|
| 小学生 | 心身症・登校渋り | 安全確保(距離を置く) | 別室・適応指導教室・転校 |
| 中学生 | 内申/思春期の自尊心 | 追及しすぎない聞き方 | 別室・レポート・通級 |
| 高校生 | 単位・出席日数 | 進路の再設計 | 通信制/転校/一時休止 |
学校を変えるという選択肢についての話
いじめが長引いているとき、転校や適応指導教室を使うのはごく普通の手段です。ただ、「逃げになるのでは」という微妙な偏見がまだ残っていて、それに縛られて動けなくなる親も少なくありません。
でも、転校は“逃げ”ではなく、単純に環境調整です。
大人だって合わない職場から転職するのと同じで、子どもにも「合う学校」と「合わない学校」があります。教育委員会に相談すれば手続きのイメージも教えてもらえますし、適応指導教室と併用するパターンもごく普通にあります。
フリースクールや通信制高校も、選択肢として十分現実的です。学費・通学形態・学習サポートの仕組みなどは、事前に複数比較しておくと、いざというときに動きやすくなります。
個人的な話をすると、私自身も昔まったく向いていない仕事を続けていて、毎日怒られ続けてほぼ潰れかけていました。でも、進路をパソコン系に切り替えた瞬間に、生活もメンタルも一気に変わりました。人は環境で伸び方が大きく変わります。子どもの将来の選択肢を広げる意味でも、環境を変えるという選択は十分“攻めの一手”です。
不登校が長期化したときの考え方
「学校」の話題を出しただけで体調が乱れる子もいます。そういう場合、いつ復学させるかを早い段階で決める必要はほとんどありません。 むしろ、そこで焦ると高い確率で失敗します。
まずは、生活リズムを整え、安全だと感じられる場所を確保し、その上で元気が戻ってきてから「どこから、どのくらい勉強を再開するか」を一緒に決めれば十分です。家庭教師・オンライン塾・適応指導教室・通信制高校など、後から追いつくためのルートはいくらでもあります。復学のタイミングを急いで追い詰める必要はまったくありません。
子どもにとって、「三年後」「五年後」がぼんやりでもイメージできるだけで、今のしんどさの感じ方はかなり変わります。
親のメンタルが削れる前に知っておいてほしいこと
いじめ対応は、実は子ども以上に親のほうが消耗します。
学校とのやり取りは神経を使いますし、仕事と両立しながら情報収集や交渉まで抱え込んでいれば、どこかでキャパオーバーになるのが普通です。
だからこそ、親自身が安心して愚痴を吐ける場所を最低一つは持つことが本気で重要です。
カウンセラーでも、電話相談でも、信頼できる家族でもかまいません。
必要であれば、親が心療内科にかかるのもまったくおかしなことではありません。
意図的に“何もしない日”を作って、情報から距離を置く日を挟むだけでも、頭と気持ちが戻ってくることがあります。
親が潰れると、子どもはもっと困ります。
子どもを守るためにも、親自身が自分のメンタルを守ることは、優先順位としていちばん上に置いていいテーマです。
