目次
いじめ後に“自尊心が落ちる理由”を最初に押さえる
否定された体験が“自分の価値”にすり替わる仕組みを理解する
いじめでつらいことを言われたり、され続けたりすると、本来は「相手の行動がおかしい」のに、子どもの頭の中では「自分がダメだからだ」にすり替わりやすくなります。
「ブス」「キモい」「いらない」といった言葉を何度も浴びせられると、そのたびに心の中で刻み直してしまい、「事実」ではなく「自分の本質」だと勘違いしてしまうんですね。
特にまじめで頑張り屋の子ほど、「自分さえ我慢すれば」「自分がもっとちゃんとしていれば」と、自分側に原因を引き取ろうとします。時間が経てば自然と元通り…とはいかず、この誤った自己イメージを少しずつほぐしていく視点が必要になります。
友人関係の崩壊が「自分が悪い」という誤解を生む
いじめが起きると、それまで仲が良かった友達が急に離れていったり、見て見ぬふりをする側に回ったりします。すると子どもは、「こんなにたくさんの人が離れていくなんて、やっぱり自分に問題があるんだ」と感じやすくなります。
本当は、クラスの空気やリーダー格の子の影響、周囲の恐怖心など、さまざまな要因が絡み合っているのに、それを全部「自分の欠陥」のせいにしてしまう。
この誤解が放置されると、「どうせ自分と仲良くしてもらっても、また壊れる」という諦めにつながり、次の人間関係に踏み出す力を奪ってしまいます。
大人の励ましが逆効果になるパターンを知る
つらい状況を見ていると、どうしても「あなたは悪くないよ」「気にしなくていいよ」と言いたくなると思います。ただ、子どもがまだ感情の渦の中にいるときにこうした言葉を投げると、「この苦しさを分かってもらえていない」というズレにつながることがあります。
「そんなこと気にしなくて大丈夫」と言われると、子どもは「自分は気にしてしまう弱い人間だ」と、別の形で自分を責めてしまうこともあります。
前向きな言葉を増やすこと自体が悪いわけではありませんが、その前に「どれだけつらかったか」に十分寄り添う時間が必要だ、という意識を持っておくと、言葉の選び方も変わってきます。
年齢ごとに傷つき方が異なることを理解する
同じいじめ体験でも、低学年と高校生とでは、心の中での受け取り方がまったく違います。小さい子ほど「ただただ怖かった」「おなかが痛くなる」といった感覚レベルで傷つきますし、中高生になるほど、「自分の性格」「将来」「社会の中での自分の位置」までをセットで否定されたように感じやすくなります。
つまり、年齢が上がるほど、傷つき方が抽象的で深くなり、「一言二言の励まし」では届きにくくなっていきます。
親の側が「年齢によってダメージの形が違う」と知っておくだけでも、求める回復スピードや、声かけの期待値を現実的に調整しやすくなります。
自己効力感を取り戻すには“言葉より行動”が必要になる
いじめで傷ついた自尊心は、「大丈夫だよ」「あなたは素敵だよ」という言葉だけでは戻りきりません。子ども自身が「自分でもできた」「前より少し楽になった」と実感する、“行動ベースの成功体験”がどうしても必要になります。
たとえ小さなことでも、自分の力で何かをやり遂げたり、人に喜ばれたりした経験が、「自分はダメじゃない」「まだできることがある」という感覚を少しずつ積み上げていきます。
この「できた」の積み重ねをどう作るかが、自尊心回復の中心であり、記事の後半で扱う大きなテーマになります。毎日の過ごし方を整えるヒントが欲しいときは、いじめ後の家庭ルーティンづくりを具体的にまとめた記事 もあわせて読むと、無理のないペース配分がイメージしやすくなります。
年齢別に見る“自尊心の落ち込み方”と声かけの軸
低学年|感情を代弁し安心を先に作る
低学年の子どもは、自分の気持ちを言葉で整理する力がまだ発達途中です。「何がつらかったのか」「どう感じたのか」をうまく話せないまま、体の不調や不機嫌として表に出てくることが多くなります。
この段階で大切なのは、状況を聞き出すことよりも、「怖かったね」「おなか痛くなるくらいつらかったんだね」と、親が子どもの感情を代わりに言葉にしてあげることです。
「ちゃんと話せたらえらい」ではなく、「言えなくてもここにいていい」「泣いても怒っても大丈夫」という安心の土台ができて、初めて自尊心の回復が動き出します。
中学年|自分の気持ちを“整理できる言葉”を提供する
中学年になると、少しずつ「悔しい」「情けない」「むかつく」など、自分の感情を言葉で説明できるようになってきます。ただ、その感情がごちゃ混ぜになっていて、うまく整理できないことも多い時期です。
親が「本当はどうしてほしかった?」「どの場面が一番イヤだった?」と、一緒に振り返りながら、感情と事実を分けていく手伝いをしてあげると、「自分の気持ちを説明できた」という小さな自信につながります。
ここでは、アドバイスよりも、「あなたの気持ちはこういうことだよね?」と確認しながら、言語化のサポートをすることが、自尊心の土台を支える役割になります。
高学年|自己否定の芽を摘み、論理的に誤解を修正する
高学年になると、「自分はダメだから」「自分なんかいなくてもいい」といった、はっきりした自己否定の言葉が出てくることがあります。ここでは、単に否定を打ち消すのではなく、「その考え方がどこから来ているか」を一緒にたどっていくことが大切です。
「その言葉を言ったのは誰だった?」「本当にその人がクラス全員の代表なのかな?」と、少しずつ視野を広げていき、「一部の人の行動が、あなたの全部の価値を決めているわけではない」ということを具体的に示していきます。
論理的に整理する力が育ち始めている時期だからこそ、「考え方の誤解」を一つひとつ修正していくことで、自分を見る目を柔らかく戻していけます。
中学生|承認欲求と比較意識を扱いながら距離感を調整する
中学生は、友達からどう見られているか、SNSでどう評価されているかが、自尊心に直結しやすい時期です。いじめを受けると、「自分だけが置いていかれている」「他の子はうまくやれているのに」という激しい比較意識に苦しみがちです。
親としては、「そんなこと気にしなくていい」と言いたくなりますが、それを否定すると、かえって「分かってもらえない」と閉じてしまいます。
「比べちゃうよね」「あの子はあの子、あなたはあなたで、得意なものやしんどいところが違うよね」と、承認欲求や比較の気持ち自体は認めたうえで、「そこからどう距離を取るか」を一緒に考えるスタンスが重要になります。
高校生|自己像の再構築を支え、将来軸で視野を広げる
高校生になると、「自分はどんな人間なのか」「この先どう生きていくのか」という自己像・将来像と、いじめの体験が絡み合ってきます。「こんな過去がある自分は、もうこの先もダメなんじゃないか」と感じてしまう子も少なくありません。
ここで必要なのは、「いじめられた自分」だけで自己像を固めないように、時間軸を長く取って一緒に見直していくことです。「これまでやってきたことの中で、誇れるものは何があった?」「この先、どんなふうに人と関わっていきたい?」と、未来の視点も持ち込みながら話すことで、いじめ体験が“人生のすべて”にならないように支えていきます。
親が「過去も含めて、あなたの味方でいる」という姿勢をはっきり示すことが、自尊心の再構築の土台になります。
自尊心を回復させる“家庭でできる成功体験づくり”
小さく達成できる課題を設定し“行動の成功”を積み重ねる
自尊心を立て直すうえで、いきなり「クラスに戻って普通に過ごす」「前みたいに部活を頑張る」といった大きな目標を掲げるのは負担が大きすぎます。
まずは「今日はここまで起きてこられた」「宿題のこのページだけ一緒にやれた」など、子どもがほんの少し頑張れば届く課題を設定してあげることが大切です。
そのうえで、「さっきのここ、自分でできてたね」「昨日より顔つきが少し楽そうだね」と、具体的な行動に対してフィードバックしていきます。
こうした細かい「できた」の積み重ねが、「自分はもう何もできない」という感覚を少しずつ溶かしていきます。
得意分野を再発掘し“強みの再認識”を促す
いじめを経験すると、自分の良さや強みまで見えなくなってしまいがちです。そこで、過去に褒められたこと、好きだったこと、夢中になっていたことを一緒に振り返り、「あれもできていた」「こういうところは前から得意だったよね」と、“自分の味”を掘り起こしていく時間を持てると良いです。
絵を描くのが好き、工作が得意、ゲームの工夫が上手、ペットの世話を忘れない…どんな小さなことでも構いません。誰かに役立った経験や、喜ばれた場面を思い出すことで、「自分には価値がある」という感覚が、ゆっくりと戻ってきます。
できたことを事実ベースでフィードバックする
「すごいね」「えらいね」と感情だけでほめるよりも、「昨日より10分長く机に向かえたね」「嫌な気持ちをちゃんと教えてくれたね」と、事実を具体的に言葉にして伝えるほうが、子どもの中に残りやすくなります。
事実ベースのフィードバックは、「親が勝手に持ち上げている」のではなく、「本当にあった出来事」に根ざしているので、子どもも受け入れやすいのです。
こうした積み重ねが、「自分の変化に気づける目」を育て、自尊心の回復を内側から支えていきます。
家庭内で役割を持たせ自己効力感を上げる
家庭の中で、「あなたがいるから助かっている」と実感できる役割を持てると、自尊心の回復が一気に進みます。毎日テーブルを拭いてもらう、ゴミ出しを任せる、下の子の宿題を見てもらうなど、家族の一員として頼られる経験を意識的に作ってみてください。
ここで大事なのは「完璧にできること」を求めるのではなく、「やってくれたこと」そのものに感謝を伝えることです。
「ありがとう、助かったよ」という言葉の積み重ねが、「自分には役割がある」「自分がいないと困る人がいる」という実感につながっていきます。
学校復帰は“成功体験が溜まってから”段階的に進める
学校に戻すことをゴールに置きたくなる気持ちは自然ですが、自尊心がボロボロの状態で無理に復帰させても、再び傷つくリスクが高まります。
家庭の中で「できていること」「少し楽になってきたこと」が一定数積み重なってから、短時間の別室登校や、信頼できる先生との面談など、負担の少ない形で一歩だけ前に進めていくイメージが大切です。具体的なステップの組み立て方は、いじめ後の復学で押さえたい段階的な戻し方をまとめた記事 を参考にしながら、子どもの体力と気持ちに合わせて調整していくと安心です。
「今日は教室には入らなかったけど、学校まで行けた」「玄関で先生とだけ話せた」など、一つひとつを成功として扱い、そこで得た感覚を丁寧に言葉にしてあげることが、次の一歩を踏み出す力になっていきます。
人間関係・学校生活を再構築するための実践ステップ
信頼できる大人とつながり“安全基地”を確保する
いじめ後の子どもにとって、「ここなら絶対に自分を否定されない」と感じられる場所と人の存在は、回復の前提条件です。親はもちろんですが、信頼できる担任やスクールカウンセラー、保健室の先生など、学校内にも一人“安全基地”になってくれる大人がいると心強くなります。
子どもが話しやすい相手を一緒に探し、「困ったらまずこの人に」と具体的に共有しておくと、いざというときに孤立しにくくなります。
家庭だけで抱え込まず、「味方の大人の輪」を広げておくことが、学校生活の再構築を支える土台になります。
小さなグループ・短時間から接触を再開する
いきなりクラス全体の中に戻るのではなく、まずは気心の知れた友達一人、二人との短時間の接触から再開していくほうが、心理的負担は小さくなります。放課後に短時間遊ぶ、オンラインでゲームを一緒にする、図書室で一緒に過ごすなど、できる範囲からでかまいません。
「全部元通りにする」のではなく、「安心できるつながりを一つずつ増やしていく」イメージで関係を広げていくと、自尊心も少しずつ追いついてきます。
ここでも、うまくいった場面を一緒に振り返り、「あのとき自分から誘えたね」「笑顔が出てたね」と具体的に伝えていくことが、前に進む勇気を支えます。
担任と役割分担し、負担の少ない復帰計画を作る
学校復帰のタイミングや方法は、家庭だけで決めず、担任や関係職員と役割分担をしながら計画を立てることが重要です。
たとえば、「最初の一週間は保健室登校」「次の段階で、特定の授業だけ教室参加」「行事は子どもの希望を最優先する」など、細かいステップをあらかじめ共有しておくと、子どもも見通しを持ちやすくなります。
担任側には、「その日の様子がどうだったか」「無理していなかったか」をこまめにフィードバックしてもらい、家庭と学校で子どもの状態をすり合わせながら進めていくことが、再び傷つけないためのポイントになります。
新しいコミュニティ・活動で成功体験を広げる
必ずしも元のクラスや部活だけにこだわる必要はありません。地域の習い事やオンラインの講座、ボランティア活動など、「今の自分を否定されにくい場」で成功体験を積むのも有効です。
新しいコミュニティで「歓迎された」「役に立てた」という感覚を得られると、「学校が世界のすべてではない」「自分を受け入れてくれる場所は他にもある」という認識が生まれます。
それが結果的に、学校生活の再挑戦にも良い影響を与えていきます。学校以外の進路も含めて長期的な選択肢を整理したいときは、いじめ後の不登校・転校・適応指導教室の選び方を解説した記事 に目を通しておくと、「どこまで環境を変えるか」の判断材料が増えて心強く感じられるはずです。
逆効果になる支援を避け、安定した回復軌道をつくる
“頑張れ”“気にしないで”などの軽い励ましを避ける
つい口から出やすい「頑張れ」「気にしないで」は、いじめ後の子どもにとっては、「もう頑張っているのに」「気にしないほうがおかしい」というプレッシャーに変わってしまうことがあります。
気持ちを軽くしてあげたい一心で言った言葉が、「今の自分を否定された」と感じさせてしまうのは、もったいないことです。
まずは「ここまでよく耐えてきたね」「気にしてしまうのは当たり前だよ」と、今の状態をそのまま認める言葉から始めるほうが、結果的に回復への近道になります。
過剰な期待・先回りケアが自信を奪うことを理解する
「早く元気になってほしい」「また前みたいに学校に行けるようになってほしい」という思いが強すぎると、知らず知らずのうちに、子どもに対して高い期待をかけてしまうことがあります。
また、子どもがしようとした行動を、先回りして親が全部整えてしまうと、「自分ではできないから、やってもらっている」という感覚が強まり、自己効力感をかえって下げてしまうこともあります。
子どもが自分のペースで少しずつ動こうとしているときは、「見守りつつ、必要なところだけ手を貸す」という距離感を意識してみてください。
「全部やってあげる」のでも「全部任せる」のでもない、その中間を探ることが、安定した回復には欠かせません。
比較・評価をしない声かけを徹底する
「前のあなたはもっと元気だったのに」「同じクラスの○○ちゃんはもう復帰しているよ」などの言葉は、たとえ悪気がなくても、自尊心をさらに削ってしまいます。
いじめ後の子どもはすでに、自分を厳しく責める“内なる批判者”を心の中に抱えている状態です。そこに外側からの比較や評価が重なると、「やっぱり自分はダメだ」と確信を強めてしまいます。
意識したいのは、「誰かと比べる」のではなく、「その子自身の昨日と今日」を見て声をかけることです。「昨日より少し笑顔が増えたね」「今日はここまで来られたね」と、その子のペースを基準にして言葉を選ぶことが、自尊心を守る一番の防御になります。
焦らず“子どものペース”で回復を待つ姿勢を取る
親としては、一日でも早く笑顔を取り戻してほしいし、学校生活も軌道に戻ってほしいと思うはずです。ただ、自尊心の回復は「坂道を一気に駆け上がる」ものではなく、「一歩進んで半歩下がりながら、少しずつ高度を上げていく」ような経過をたどることがほとんどです。
調子のいい日もあれば、急に落ち込む日もある。その波を、「また元に戻ってしまった」と捉えるのか、「こういう揺れを繰り返しながら、少しずつ前に進んでいくもの」と捉えるのかで、親の表情や声のトーンも変わってきます。
子どものペースを尊重しながら、「どんな状態でも味方でい続ける」という姿勢そのものが、いじめ後の自尊心を支える、いちばん大きな支援になります。
