目次
いじめ後に“学力が低下しやすい理由”を最初に押さえる
集中力が落ちる“心理的負荷”を理解する
いじめを経験すると、多くの子どもは頭の中のかなりの部分を「不安」と「警戒」に使うようになります。授業を受けていても、「また何か言われないか」「休み時間どうしよう」といった心配が続いていると、黒板や先生の説明に注意を向ける余力が残りません。
成績が下がったとき、つい「サボっているから」「やる気の問題」と考えてしまいがちですが、実際には“集中するための燃料”が心理的ストレスに奪われている状態であることが多いです。勉強量を増やす前に、まずこの前提を親が理解しておくと、子どもへの見方が少し柔らかくなります。
睡眠・生活リズムの乱れが学習効率を下げる
心が不安定になると、寝つきが悪くなる・夜中に何度も目が覚める・朝起きられない、といった睡眠の乱れが起こりやすくなります。睡眠が浅い状態が続くと、記憶の定着がうまくいかず、「勉強しても頭に入らない」「昨日やったはずの内容を思い出せない」と感じやすくなります。
また、食事量の低下や運動不足も、脳の働きを落とす要因になります。学力の問題に見えても、その土台となる生活リズムが崩れていれば、どれだけ頑張っても効率が上がりません。「まず生活から整える」という意識が、遠回りに見えて実は一番の近道です。
不登校・登校しぶりが知識の断絶を生む
いじめがきっかけで学校に行きづらくなると、授業を丸ごと抜かしてしまう日が増えます。とくに算数・数学や英語のような“積み上げ型”の科目では、一度抜けた単元がその後の内容にそのまま影響していきます。
親から見ると「復学したのだから、しばらくすれば追いつけるはず」と思いたくなりますが、実際にはその間に進んだ範囲が“理解の穴”として残っています。子ども自身も「どこから分からないのか分からない」状態になりやすく、これがさらに学習への苦手意識を強めてしまいます。「復学の進め方そのものを見直したい」と感じる場合は、いじめ後の復学条件や学校との調整ポイントを詳しく整理したガイド もあわせて読んでおくと、学力だけに意識が偏らずに済みます。
自己肯定感の低下が“学習意欲”を奪う
いじめを経験すると、「自分なんて…」という感覚がじわじわと広がりやすくなります。友達関係だけでなく、「どうせ勉強してもできない」「頑張っても意味がない」と、学習面にもその感覚が波及していきます。
テストの点が下がると、「やっぱり自分はダメだ」という“証拠”として受け取ってしまうことも多く、挑戦する前にあきらめるクセがついてしまいがちです。ここで必要なのは、「結果」だけを責める視点ではなく、「そう感じてしまう背景」に目を向けることです。学力と同時に自尊心の回復も進めたいときには、いじめ後の自尊心をどう立て直すかを年齢別にまとめた記事 を手元に置いて、声かけや日常の関わり方を整えていくと効果が出やすくなります。
学校の授業ペースに追いつけない構造を把握する
学校の授業は、個々の事情に合わせてペースを落としてくれるわけではありません。クラス全体として予定通り進める必要があるため、一度遅れが生じると、追いつくためにさらに大きなエネルギーが必要になります。
子どもにとっては、「教室では分かったフリをしてやり過ごす」「質問したいけれど、また何か言われそうで聞けない」という状態に陥りやすく、結果として遅れが固定化されます。親がこの構造を理解しておくと、「努力不足」と切り捨てずに、現実的な手立てを考えやすくなります。
どこでつまずいているか“原因を切り分ける”ための観察軸
心理面(不安・緊張・回避)の影響を見抜く
まず見ていきたいのは、子どもの心の状態です。宿題に向かおうとすると急にイライラしたり、机に座ったまま手が止まったりする場合、「勉強が嫌い」というより、不安や緊張が強すぎて動けない可能性があります。
「プリントを見るだけでお腹が痛くなる」「教科書を開くと、その教科に関係した嫌な場面を思い出す」といった反応も、心の負荷が勉強に結びついているサインです。こうした様子があるかどうかを、日々の小さな行動から観察してみてください。
生活面(睡眠・食事・活動量)の乱れを確認する
次に、生活全体のリズムをチェックします。寝る時間がバラバラ、朝はギリギリまで起きられない、休みの日はほとんど動かない…といった状態が続いているなら、学力の前に“体力の土台”が崩れていると見たほうが自然です。
食事量や顔色、日中の眠気などもヒントになります。「集中できない」の裏側に、単純な栄養不足や慢性的な睡眠不足が隠れていることも少なくありません。勉強への向き合い方だけを見るのではなく、生活丸ごとを一度眺めてみることが大切です。
学習面(理解の穴・基礎の崩れ)を特定する
心理面と生活面の様子を押さえたうえで、改めて「どのあたりから分からなくなっているのか」を一緒に探っていきます。テストの点数だけでは、どの単元に穴があいているのかまでは分かりません。
教科書をさかのぼって一緒に見てみる、簡単なドリルを解きながら「ここは大丈夫」「ここから怪しい」と印をつけていくなど、基礎から確認する作業が必要です。子どもに「このページから全然分からない」「ここを飛ばして進んでしまった」と言わせてあげることも、重要な手がかりになります。
学校での様子を担任と照合する
家庭で見えている姿と、学校での様子が一致しているとは限りません。授業中の表情、板書の取り方、発言の頻度、テストだけでは見えない小さなつまずきなど、担任だからこそ気づいているポイントがあります。
家庭で感じている不安や観察した様子を伝えたうえで、「どの教科で、どの場面で困っていそうか」「周りとの理解度の差はどれくらいか」を具体的に聞いてみましょう。両方の視点を合わせることで、「何から手をつけるべきか」がはっきりしてきます。
本人の“やりたい気持ち”と現実のギャップを見る
「本当は勉強したい」「成績を戻したい」と思っていても、今の状態ではとてもそこまで手が回らない…というギャップを抱えている子も多くいます。
子どもが「やらなきゃとは思っている」「でも机に向かうとしんどくなる」と話す場合、その言葉自体が大事なサインです。意欲はあるのに動けないのか、そもそも意欲自体が枯れているのかによって、かける声や支援の種類は変わります。「やる気がない」の一言で片づけず、気持ちと現実の距離を一緒に確認していきましょう。
家庭でできる“学習再構築”の段階的ステップ
まず生活リズムと学習環境を整える
学習を立て直す前提として、起きる時間・寝る時間・食事のタイミングをできる範囲で固定していきます。完璧にそろえる必要はありませんが、「毎朝だいたいこの時間に起きる」「寝る前にはスマホを置いてゆったりする」といった“形”を作るだけでも、集中しやすさは変わってきます。
同時に、机の上を片づける、テレビやゲームとの距離をとるなど、勉強に切り替えやすい環境づくりも意識していきます。「勉強しなさい」と言うより、「勉強しやすい場」を整えるほうが、子どもにはずっと届きやすいです。
短時間・低負荷で“成功体験”を積ませる
いきなり長時間の勉強を再開しようとすると、最初の数日で息切れしてしまいます。最初は「5〜10分だけ」「1ページだけ」など、ごく短い時間と量から始め、「できた」という感覚を積み重ねることを優先します。
「今日はここまでやれたね」「昨日より1問多くできたね」と、結果よりも“取り組んだ事実”を具体的に言葉にして伝えていくと、自己効力感が少しずつ戻ってきます。量を増やすのは、その感覚が育ってからで十分です。
苦手単元を見える化して優先順位をつける
つまずいている範囲が広いと、親も子どもも「どこから手をつけていいか分からない」となり、結局何も進まなくなってしまいます。
教科書や問題集を一緒に見ながら、「ここは分かる」「ここは怪しい」「ここは全然分からない」と三段階くらいに分けて印をつけると、必要な復習範囲が目に見える形になります。すべてを一気にやろうとせず、「今月はこの単元」「来月は次の単元」と、少しずつ優先順位を決めていくと、親子ともに負担感が減ります。
毎日の勉強量を“固定ではなく調整式”にする
「毎日30分」「必ず3ページ」と固定してしまうと、体調や心の状態が悪い日にこなせず、「できなかった自分」に落ち込むきっかけになります。
例えば、「最低ラインは5分/1ページ。調子が良ければプラスしてもいい」というように、“その日の状態に応じて増減できる枠組み”にしておくと、続けやすさがグッと上がります。親は、量よりも「続けられていること」自体を評価してあげる視点を持っておくとよいでしょう。
家庭学習と学校授業を結びつける声かけをする
家での勉強と学校の授業がバラバラに見えていると、子どもは「何のためにやっているのか」が分からず、取り組む意味を感じにくくなります。
「今日やったこの問題、明日の算数で同じところが出てくるね」「これが分かると、授業で先生の話がもっと入りやすくなるよ」といった形で、家庭学習と教室での場面を結びつける一言を添えてあげると、「やれば授業が楽になる」という実感が少しずつ育っていきます。
避けるべきNG対応と“効果が出る支援”の選び方
“励ましの圧”や比較を避ける
「頑張れば取り戻せるよ」「前はもっとできていたじゃない」といった言葉は、親としては励ましているつもりでも、子どもには「早く結果を出さなきゃ」「今の自分はダメなんだ」と聞こえてしまうことがあります。
また、兄弟や友達との比較は、自尊心をさらに削るだけで、意欲につながることはほとんどありません。声をかけるときは、「あなた自身のペース」と「今日できたこと」に焦点を絞るほうが、回復にはプラスに働きます。
親が教えすぎて関係が悪化するパターンを避ける
親が直接教えると、どうしても感情が入りやすく、「なんでここが分からないの」「前にも言ったよね」と言いたくなる場面が増えます。子どもも、家庭で怒られながら勉強するうちに、「勉強=怒られる時間」というイメージを持ってしまいがちです。
もし毎回イライラしてしまう・親子ゲンカになりやすいと感じるなら、「教える役割」を外部に一部委ねることも選択肢です。親は“環境づくりと応援”に役割を絞るほうが、関係を守りやすくなります。
個別指導・オンライン学習の適性を判断する
外部の学習支援としては、個別指導塾・少人数塾・オンライン教材・家庭教師など、さまざまな形があります。大切なのは、「どれが一番有名か」ではなく、「その子の性格や今の状態に合うかどうか」です。
人見知りが強い子は、最初はオンラインやマンツーマンが合うかもしれませんし、家では集中できない子は、あえて教室に通うスタイルが向いている場合もあります。体験授業やお試し期間を活用し、子どもの感覚も聞きながら「続けられそうか」を一緒に判断していくとよいでしょう。
学習支援員やスクールカウンセラーの役割を理解する
学校によっては、学習支援員や別室でのサポート、スクールカウンセラーなどを利用できる場合があります。学習支援員は授業中のフォローや補助説明を、スクールカウンセラーは心の負荷の整理をそれぞれ担当してくれる存在です。
いじめ後の学力低下では、「勉強のわからなさ」と「心のしんどさ」が絡み合っていることが多いため、両方の窓口を並行して使うことで、回復がスムーズになることがあります。学校側にどのような支援があるのか、一度具体的に聞いてみる価値は大きいです。
医療的支援が必要になるケースを見極める
不安や落ち込みが強く、「眠れない」「食欲が極端にない」「学校や勉強の話題になるとパニックに近い反応が出る」といった状態が続く場合は、学習支援だけでは対応が難しいこともあります。
そのようなときは、小児精神科や心療内科など、医療の専門機関に一度相談するほうが安全です。「病院に行く=大げさ」ではなく、「今の状態を正確に評価してもらう」ための一歩だと捉えてください。心の不調を整えることで、結果として学習への向き合い方も変わってくることがあります。
学校・支援サービスと連携して“回復ルート”を安定させる方法
担任に学習状況と家庭での観察点を共有する
家庭だけで抱え込むと、親の焦りがどんどん大きくなってしまいます。テストの点数だけではなく、「家でこの教科のプリントに手が止まりやすい」「この単元で特に困っているようだ」といった具体的な観察を、担任に共有してみましょう。
先生側も、「家庭ではそう見えているのか」と分かると、授業中の声かけを変えたり、板書のフォローを意識したりしやすくなります。お互いの情報を出し合うことで、子どもへの支援が立体的になります。
授業の補填(プリント・別室支援)を依頼する
欠席が多かった時期や、特定の教科で大きな穴がある場合には、「その部分をどう補うか」を学校と一緒に考えていく必要があります。
単元ごとのプリントやドリル、放課後や休み時間を使った短時間のフォロー、場合によっては別室での個別支援など、学校によって可能な対応はさまざまです。「ここだけでもフォローしてもらえると助かる」という範囲を具体的に伝えると、先生も動きやすくなります。
塾・家庭教師と学校のカリキュラムを調整する
外部の塾や家庭教師を利用する場合は、「学校の進度」と「外部で扱う内容」がバラバラにならないように意識しておくと効果が上がります。
学校で今どの単元をやっているのか、どこに理解の穴があるのかを共有し、外部では「補習」に重点を置くのか、「得意教科を伸ばす」ことに軸を置くのかを決めておきましょう。親が間に入りすぎて疲れてしまうようなら、塾側に学校の教科書やプリントを見せ、直接調整してもらう方法もあります。
進路を見据えた“長期の再構築プラン”を作る
いじめ後の学習の立て直しは、どうしても時間がかかります。短期間で元の成績に戻すことを目標にすると、親も子どもも息切れしてしまいます。
「この1年でここまで戻せれば十分」「中学卒業までにこの教科は基礎を固めておこう」など、少し長めのスパンで目標を置き、定期的に見直していくイメージを持つと、焦りが和らぎます。学校側や塾の先生とも、「長期的にどんな力をつけていきたいか」を共有しておくと、支援の方向性が揃いやすくなります。
長期戦になりやすいからこそ、親自身のしんどさも無視できません。「もう支える余力がギリギリかもしれない」と感じたら、いじめ対応で疲れ切った保護者のメンタルケアを扱った記事 を参考にしながら、自分の心と体を守る枠組みも同時に整えていってください。
