目次
オンラインゲームでいじめが“可視化されにくい”理由を最初に押さえる
匿名性が上下関係を強化し攻撃行動を誘発する
オンラインゲームは、基本的に「誰なのかよく分からない人」と一緒に遊ぶ場です。顔も本名も分からない相手には、どうしても遠慮が薄くなります。きつい言葉を投げても相手の表情が見えず、責任も感じにくいので、冗談のつもりの一言がどんどんエスカレートしやすいんですね。
子ども同士の世界では、口調が強い子、ゲームが上手い子があっという間に“上”の立場になり、弱い側は反論しづらくなります。親からは画面と声しか見えないため、この力関係が伝わりにくく、「ただワイワイ遊んでいるだけ」に見えやすいのが厄介なところです。
VCは“声のトーン”で支配関係が形成されやすい
ボイスチャット(VC)は、文字よりも空気が伝わりやすい一方で、声のトーンや言い方だけで上下関係が固定されやすい特徴があります。命令口調で指示を出す子、笑いながら人をいじる子、何も言わず指示に従うだけの子……数回のプレイでも、その役割分担が定着しやすいんですね。
黙って聞いているからといって、必ずしも楽しんでいるとは限りません。「怒らせたくないから合わせている」「抜けたら次から誘われなくなるかも」といった緊張から、声が小さくなったり、必要以上に謝ったりすることもあります。こうした“萎縮のサイン”は、意識して見ていないと親には伝わりにくいポイントです。
ゲームの勝敗が怒り・排除を正当化しやすい
オンラインゲームには必ず「勝ち」「負け」があり、誰がミスしたかが分かりやすく見えてしまいます。熱くなっている子ほど「負けたのはお前のせいだろ」「足引っ張るなよ」と、プレイの失敗を理由に攻撃しやすくなります。
本人たちの感覚では「勝つために言っている」「ゲームだから仕方ない」と正当化しがちですが、言われ続ける側にとっては明らかないじめと変わりません。「戦術的な指摘」と「人格を否定する暴言」の境目があいまいになりやすい点も、オンライン特有のリスクです。
リアルの友達より“ゲーム仲間”が優先されやすい構造を理解する
ゲーム内でうまく連携できるメンバーが見つかると、子どもはその子たちとの時間をどんどん優先しがちです。「リアルの友達」より「一緒に勝てるゲーム仲間」のほうが楽しく感じられ、放課後や休日の時間がそちらに偏っていくんですね。
ここで問題なのは、ゲーム仲間との関係が狭く深くなりすぎると、その小さなコミュニティ内での序列や支配関係の影響力が非常に強くなることです。学校では一見普通に過ごしていても、オンラインの中でだけ強いストレスを受けている――そんな状態が生まれやすくなります。
ゲーム内の出来事は子どもが家庭に持ち込まない傾向がある
オンラインでのトラブルは、「遊びの中のこと」として処理されがちです。本人も「ゲームでいじられただけで親に心配させたくない」「こんなことで怒っていると思われたくない」と感じ、家庭ではあえて話題にしないことが多くなります。
その結果、親の目には「いつも通りゲームしているだけ」にしか見えず、実際には毎晩VCで暴言を受けている、何度もキックされている、といった状況に気づくのが遅れます。オンラインの出来事も“現実の人間関係の一部”として扱う視点がないと、重大なサインを見逃しやすいのです。
オンラインで起きる“ゲーム内いじめ・VCトラブル”の典型パターン
プレイの失敗を理由に責められる・嘲笑される
分かりやすいのは、「今のミスお前だろ」「下手すぎ」「足引っ張るなよ」といった言葉が繰り返されるパターンです。最初は冗談混じりでも、負けが続くと次第に口調がきつくなり、失敗した子が黙り込む・声が小さくなる、といった変化が出てきます。
戦略の確認やアドバイスなら建設的ですが、人格や能力そのものを笑いのネタにし始めると、もはやゲーム内いじめにかなり近い状態です。「笑われてるけど、あれはノリだから」と無理に正当化していないか、子どもの話し方にも目を向けておきたいところです。
PT(パーティ)からのキック・再招待されない
一緒にプレイしていたパーティから急に外される、再びログインしても招待が来ない、といった状況は、オンライン上の“仲間外れ”そのものです。表向きは「人数調整だから」「たまたま別メンバーでやってただけ」と説明されることもありますが、同じ子ばかりが外されている場合は、排除の明確なサインと言えます。
キックされた側は、「自分が悪かったのかな」「また誘ってもらえるかな」と不安を抱えやすく、ゲームに入る前から落ち着きがなくなったり、逆に「今日はいいや」とプレイ自体を避けるようになったりします。
VCで暴言・命令・マウントが繰り返される
VC中に「黙って言うこと聞いて」「お前は弱いからその役だけやってて」など、命令口調が当たり前になっているグループもあります。「そんなのもできないの?」「雑魚すぎ」といった暴言や、過去の戦績を持ち出してマウントを取り続ける子がいる場合、支配関係がかなり強くなっていると考えたほうがいいです。
聞いている側が笑ってごまかしていたり、「はいはい」と従っているように見えても、内心では強いストレスを感じていることがあります。VC前後の表情や、ヘッドセットを付けるときの様子から、緊張や憂うつさが出ていないか確認しておきたいところです。
特定の子だけ情報を共有されない
ゲームのイベント日程や新しい戦術、みんなで集まる時間など、連携に必要な情報を特定の子だけに伝えないというパターンもあります。その結果、「自分だけ知らなかった」「気づいたらみんな別のところで一緒に遊んでいた」という状況が続くと、仲間外れの感覚が強まっていきます。
表面上は何も攻撃されていないため気づきにくいのですが、「なんで教えてくれなかったの?」と問いづらい空気ができているほど、構造的ないじめに近づいていると考えられます。
ゲーム内チャットで晒し・陰口が回る
ゲーム内チャットや外部SNSで、「このIDのやつ下手だから組まないほうがいい」「さっきの試合で地雷だったのこいつね」といった晒し行為が行われることもあります。スクリーンネームであっても、子どもにとっては自分そのものを笑われている感覚になりやすく、強いダメージになります。
ゲーム外のチャットツールやSNSにスクショが流されるケースもあり、どこまで広がっているのか本人にも分からない状態になることがあります。
“弱い役割”を押しつけられ抜けにくくなる
ゲームによっては、明らかに負担が大きい、あるいは評価されにくい役割があります。いつも同じ子にだけ「その役やって」「お前はそれでいいよ」と押しつけられると、その子は全体の勝敗に責任を感じやすくなり、失敗したときの批判の矛先にもなりがちです。
自分から役を替えたいと言い出せない雰囲気が続くと、「我慢していないと仲間外れにされる」という心理状態に陥ります。役割の固定化が続いていないか、子どもの何気ない話から探っていくことが大事です。
リア友とオンライン友達の板挟みになる
現実の友達と、オンラインでよく遊ぶ友達が別グループになっていると、「どちらと遊ぶか」をめぐって板挟みになることがあります。リア友からは「なんで最近一緒にやってくれないの」と言われつつ、オンライン仲間からは「今日は絶対来てよ」と圧をかけられる……。
どちらかを選ぶと、もう一方のグループで陰口を言われるのではないかと不安になり、常に気を遣い続ける状態になってしまいます。この状態が長く続くと、本人の情緒がすり減っていき、ゲーム自体が大きなストレス源に変わっていきます。
親が見抜くべき“危険サイン”と切り分けの視点
ゲーム前後で機嫌が極端に変わる
ゲーム前は楽しそうなのに、終わった途端に不機嫌になる、あるいは妙にハイテンションになる――そんな変化が続くとき、ゲーム内で強い感情の揺れが起きている可能性があります。負けて悔しいだけのこともありますが、「怒鳴られた」「キックされた」といった出来事があると、機嫌の振れ幅がより極端になります。
同じパターンが何度も続くようなら、「さっきのゲーム、何かあった?」と軽く聞いてみる価値があります。内容をはぐらかす・話したがらないときほど、注意して様子を見たいサインです。
VC時だけ異常に緊張している
普段は元気に話す子が、VCをつなぐと途端に口数が減る、声が小さくなる、ヘッドセットをつける前に深呼吸をする――といった様子があれば、オンライン上の力関係に押されている可能性があります。
「真剣にやっているから静かなだけ」と片づけず、肩のこわばりや表情の固さ、終わったあとの疲れ具合なども含めて見てみてください。毎回プレイ後にぐったりしているようなら、“楽しみ”より“緊張”の比重が大きくなっているサインです。
ゲーム仲間との関係が固定化し依存が強まる
いつも同じメンバーとしか遊ばない、他のゲームや遊びに誘っても「その時間は○○とやる約束だから」と頑なに断る――こうした状態が続くと、特定の仲間への依存が強まっている可能性があります。
そのグループ内での立場が悪くなったとき、一気に居場所を失うリスクが高くなります。依存度が高いほど、「嫌なことがあっても抜けられない」「合わせ続けるしかない」という思考になりやすく、トラブルに巻き込まれても声を上げにくくなっていきます。
ゲーム内容を聞くと曖昧にごまかす
「今日は誰とやってたの?」「どんな感じだった?」と聞いたとき、以前は楽しそうに話していたのに、最近は「別に普通」「まあまあ」と曖昧に濁すようになった場合、話しづらい出来事が増えている可能性があります。
単なる反抗期のそっけなさと見分けるためにも、ゲーム以外の話題との違いを見ておくと判断材料になります。ゲームの話題だけ明らかに避けているなら、「そこに触れられたくない理由」が隠れているかもしれません。
負けていないのに“謝るクセ”が増えている
プレイを見ていると、明らかに本人のミスではない場面で「ごめん」「俺のせいだわ」と謝ることが増えている場合、普段から責められ慣れている可能性があります。VCでも、指示が飛ぶたびに「はい、すみません」と反射的に返しているようなら、上下関係がかなり固定されている状態です。
ゲーム以外の日常会話でも、必要以上に自分を責めたり、すぐ謝ったりする傾向が強まっていないかを合わせて見ていくと、心の負荷の大きさをつかみやすくなります。
オンライン特有のトラブルを減らす家庭での予防策
VCを使う条件(相手・時間帯)を明確にする
ボイスチャットは便利な一方で、トラブルの入口にもなりやすい機能です。「VCを使っていい相手は、顔や名前を知っている同級生だけ」「深夜帯はVCを使わない」など、誰と・いつ使うかをあらかじめ決めておくと、リスクをかなり減らせます。
一方的に禁止するのではなく、「知らない大人が混ざると、年齢差や力の差が大きくて危ないよね」といった背景もセットで共有しておくと、子どもも納得しやすくなります。あわせて、ゲーム以外も含めたオンラインの付き合い方全体を整理したいときは ゲームやSNSがきっかけのいじめを防ぐための具体的なルール例をまとめた記事 を参考にしながら、家庭の方針をすり合わせていくとよいでしょう。
プレイ時間と休憩ルールを管理し情緒を整える
長時間ぶっ続けでプレイしていると、疲労とイライラで判断力が落ち、ちょっとした言葉にも過敏に反応しやすくなります。逆に、自分の感情が荒れている状態で他人にきつく当たってしまうこともあります。
一定時間プレイしたら必ず休憩を挟む、夜は何時までと区切る、といったルールは、単に健康のためだけでなく、トラブルを減らす意味でも重要です。時間管理を親がすべて決めるのではなく、子どもと一緒に「どれくらいなら集中力を保てるか」を話し合って決めると、続けやすくなります。ゲーム以外のスマホ利用も含めて見直したい場合は、子どものスマホ依存を無理なく減らすデジタルデトックスの進め方を解説したガイド を併用すると、生活全体のリズムを整えやすくなります。
“暴言・煽りを真に受けない”スキルを教える
オンラインの世界では、普段なら口にしないようなきつい言葉や煽りが、驚くほど軽く飛び交います。すべてを真に受けていると、あっという間に心がすり減ってしまいます。
「匿名だと雑な言い方をする人が増える」「強く言う人ほど、自分の不満をぶつけているだけのことも多い」といった背景を伝えつつ、「言われた内容が本当に自分の問題なのか、一歩引いて考える」練習をしておくと、攻撃的な言葉から距離を取りやすくなります。アドバイスと暴言の違いを一緒に整理しておくのも有効です。
固定メンバー依存を避けるための遊び方を広げる
いつも同じメンバー・同じゲームにしか関わらない状態は、トラブルが起きたときの逃げ場を狭めます。複数のゲームを持つ、ソロプレイや協力プレイなど遊び方のバリエーションを増やす、オフラインの遊びも合わせて用意するなど、“居場所”を一つに偏らせない工夫が大切です。
「このメンバーと遊べなくなっても、他の楽しみがある」と感じられるだけで、無理に我慢して関係にしがみつく必要がなくなり、自分を守る選択が取りやすくなります。
深刻化を防ぐための親の初動対応ステップ
状況を時系列で整理し“構造的いじめ”か切り分ける
トラブルを聞いたときにまず意識したいのは、「いつから」「誰と」「どんなやり取りが続いているのか」を時系列で整理することです。一度きりの言い合いなのか、同じ相手から繰り返し責められているのかで、必要な対応は大きく変わります。
「昨日だけの話? それとも前から似たことが続いてる?」と、責任を追及するのではなく流れを確認する形で聞いていくと、子どもも話しやすくなります。継続性やパターンが見えてきたら、“構造的ないじめ”に近づいていると判断してよい段階です。
スクショ・録音など可能な範囲で記録を残す
オンラインのトラブルは、証拠が残っているかどうかで、その後に取れる手段が大きく変わります。チャットやVCで問題のある発言があった場合、可能な範囲でスクリーンショットや録音を残しておくと、学校や運営に相談するときに話を進めやすくなります。
ただし、すべてを監視する姿勢になると、子どもとの信頼関係が揺らぎます。「困った内容があったときだけでいいから、あとで一緒に見返せるように残しておこうか」と、“自分を守るための記録”として位置づけることが大切です。LINEやSNSでのやり取りも含めた証拠の残し方については、いじめのLINE・SNS・画像証拠の集め方を解説した記事 を一度読んでおくと、どこまで残せばよいかの目安がつかみやすくなります。
ゲームから距離を置く選択肢を一緒に検討する
状況がつらいのに「抜けたら負け」「逃げたと思われる」と感じてしまい、子ども自身がゲームから離れる選択肢を持てなくなっていることがあります。そこで、「一旦別のゲームをやる」「しばらくそのメンバーとのプレイは休む」といった距離の取り方を、親子で一緒に考えてみてください。
完全に禁止するのではなく、「心が落ち着くまで少し離れてみる」「別の遊びを増やしてみる」といった期間限定の対応にすると、子どもも受け入れやすくなります。情緒を回復させてから、今後どう関わるかを改めて検討するほうが、結果的に長く安全に遊び続けやすくなります。
必要に応じて学校・運営・保護者と連携する
同じ学校の友達と遊んでいる場合、ゲーム内のいじめは、そのまま教室の人間関係にも影響します。キックや暴言が続いている、晒し行為が行われているといった状況が確認できたら、早めに担任へ事実を共有しておくと安心です。
また、ゲーム運営側に通報できるケースや、相手の保護者と情報を共有したほうがよいケースもあります。「大ごとにしたい」わけではなく、「今のうちに止めておきたい」というスタンスで、必要な大人を巻き込みながら対応できると、子どもを一人で戦わせずに守ることができます。
