目次
相談する基準
「この程度で警察に相談していいのか」「逆に放置したら危ないのか」。
多くの保護者が、このラインで足踏みしてしまいます。警察は“教育的指導”ではなく、刑事事件として扱うかどうかを基準に判断します。ここを押さえておくと、相談のタイミングに迷いにくくなります。
暴行・傷害・脅迫・恐喝・強要など“刑事の基準”
殴る、蹴る、物を投げるといった暴行。
ケガや打撲が残る傷害。
「殺す」「学校に来るな」などの脅迫。
金品を要求する恐喝。
嫌がる行為を無理やりさせる強要。
こうした行為は、年齢にかかわらず刑事事件の範囲に入ります。
一見「軽いケガ」に見えても、回数の多さや悪質さがあれば“事件性あり”と判断されやすくなります。
SNSいじめで事件化しやすい要素
オンラインのやりとりは「遊びだから」で済みません。
- 深夜に繰り返される長文での攻撃
- 侮辱・名誉毀損にあたる投稿
- 写真・動画のばらまき
- 複数人で囲んだ誹謗中傷
- アカウントを変えて続く粘着的な投稿
こうしたケースは、少年課・生活安全課どちらから見ても事件性が強い領域です。
SNSでの記録は非常に強い証拠になります。
見逃さず、必ず保存しておいてください。
正しいSNS証拠の集め方はこちら
事件化されにくいケースの特徴
もちろん、すべてがいきなり事件扱いになるわけではありません。
- 一度きりのトラブル
- 事実が不明瞭で、裏付けがほとんどない
- 当事者同士の誤解が大きそうな場合
- 被害児童側にも相当程度の言動がある
こうしたケースは、まずは「相談」として扱われ、警察側で様子を見ながら判断されることが多いです。
どこに相談するべきか(少年課・生活安全課の役割)
警察は、入口をどこにするかで対応スピードが変わります。
交番は話しやすい窓口ではありますが、いじめ相談だけで完結する場ではありません。最初から専門部署に向かったほうが、判断も早く、話が深くなります。
少年課が担当するケース(未成年・継続的問題)
少年課は、子ども同士のトラブル全般を扱う部署です。特に、
- 未成年同士のいじめ
- 期間が長く、同じような問題が続いている
- SNSや複数人での継続攻撃
- 学校内外で絡み合っているトラブル
といったケースは、少年課が適しています。
家庭環境や背景も含めて、時間をかけて見てくれるのが特徴です。
生活安全課が担当するケース(犯罪性・緊急性)
暴行、恐喝、脅迫、強要など、犯罪の色合いが強い行為は生活安全課が担当します。
- 「今日中に判断してほしい」
- 「明日また同じ危険がありそう」
こういった、緊急性が高い案件は生活安全課への相談が向いています。
交番ではなく“警察署本館”に行くべき理由
交番はあくまで受付窓口で、事件化の判断まではできません。
結果として「署の少年課(または生活安全課)に行ってください」と回されることが多く、二度手間になりがちです。
最初から警察署本館に行き、少年課・生活安全課を指定して相談したほうが、話が早く、内容も正確に伝わります。
相談から届出・事件化までの流れ
警察での手続きは、ざっくり分けると「相談 → 被害届などの届出 → 事件化」の三段階です。
ここを混同すると、必要以上に身構えてしまいます。
相談段階で伝えるべき結論(危険度・被害内容)
相談の入口では、最初のひと言がとても重要です。
「いじめの件で…」と前置きを長くするより、
「子どもの安全面で不安があり、継続的な暴力(またはSNSでの攻撃)があります」
と、危険度と状態を先に伝えた方が、警察のスイッチが入りやすくなります。
被害届を出すときの条件と判断基準
被害届は、「犯罪事実があり、一定の証拠がある」と警察が判断した場合にすすめられます。
- ケガに関する診断書
- SNSやLINEの記録
- 脅迫・暴力の録音やメモ
- 第三者の証言
- 継続性が分かる被害メモ
こういった材料が揃っていると、被害届の受理や事件化の検討に進みやすくなります。
届出をしたからといって、自動的に事件として立件されるわけではありません。
「受理 → 捜査 → 事件にするかどうかの判断」というプロセスを踏みます。
このとき役に立つのが、日付と出来事を淡々と並べた記録と、SNS等の画面保存です。
どちらも、後からまとめて作り直すのはかなり大変なので、気づいた時点から少しずつ集めておくのが現実的です。
警察が学校と連携する際のプロセス
警察は、相談を受けた瞬間に学校へ連絡するわけではありません。
事実確認が必要だと判断された段階で、初めて学校へ照会が入ります。
- 「学校はこの事実を把握しているか」
- 「これまでどのような対応をしてきたか」
といった点を、客観的に確認するための連絡です。
保護者が心配するような「相談しただけで学校へ大げさに伝わる」という動きではありません。
持参すべき証拠と準備(警察が最も重視するもの)
警察は、“証拠の濃さ”で動き方を変えます。完璧である必要はありませんが、最低限の材料があるだけで、判断が一気に進みます。
暴力・恐喝の証拠(診断書・写真・録音)
暴力行為がある場合は、診断書が最も分かりやすく強い証拠です。
加えて、
- ケガやあざの写真
- 破れた服や壊れた持ち物の写真
- 暴言・脅しの録音
といった素材があると、警察側も被害のイメージを具体的につかみやすくなります。
イジメによる診断書の正しい取得方法はこちら
SNS・LINEの証拠(保存形式・記録化)
SNSの証拠は、スクショ一枚だけでは不十分なことが多いです。
以下のポイントを意識して保存してください。
- 画面のスクリーンショット
- 日時が分かるようにステータスバーも入れる
- アカウント名・アイコンが分かる画面
- 前後の流れが分かる範囲まで含めて保存
「この一言がひどかった」よりも、どのくらいの期間・頻度で続いたかが重要視されます。
SNSでの正しい証拠の取得方法はこちら
時系列の被害メモと学校の対応記録
一番効くのは、結局のところ“時系列”です。
- いつ
- どこで
- 誰が
- 何をしたか
そして、
- いつ学校に相談したか
- そのとき学校はどう答えたか
ここまでが一つの線でつながっていると、警察は事件性を立体的に判断できます。
時系列での証拠の取り方とテンプレートはこちら
警察相談で学校との関係悪化を防ぐ方法
「警察に相談したら、学校との関係が壊れるのでは」と不安になる保護者は多いです。
ただ、実務上は、そこまで極端な心配をする必要はありません。
警察は“学校に即連絡”しない理由
繰り返しになりますが、警察は相談段階では学校に連絡しません。
学校へ連絡がいくのは、
- 証拠がある程度そろった
- 事件として扱うかの判断が必要
- 学校側の説明内容を確認する必要がある
といった段階に入ってからです。
相談しただけで学校に「クレーム」として伝わることはありません。
あくまで、事実確認のための専門的な連携です。
学校へ話す際の表現と伝える順番
学校に「警察にも相談しました」と伝える場合は、言い方で印象が大きく変わります。
「学校の対応に不満があるからではなく、
子どもの安全面に不安があるため、外部の専門機関にも相談しました。」
このように、「安全確保」を主語にして話すと、対立ではなく“連携”として受け取られやすくなります。
学校対応と警察対応を“分離”して進めるコツ
学校には学校に求めることを、警察には警察に求めることを、それぞれ分けて進めるのが安全です。
- 学校:環境調整や見守り、加害児童への指導
- 警察:刑事的なラインの判断、安全の確保
この2つのルートを混ぜず、別枠で同時進行するイメージを持っておくと、感情的なぶつかり合いを避けやすくなります。
相談後に起こることと、保護者が備えること
「相談したら、そのあとどうなるのか」が見えないと、一歩目が踏み出しにくくなります。
ここでは、相談後の典型的な流れをあらかじめイメージしておきます。
警察の初動(聴取→状況確認→判断)
相談後の警察の動きは、おおまかに次のような流れです。
- 保護者からの事情聴取
- 証拠の確認(持参資料のチェック)
- 必要に応じて、お子さんへの簡単な聞き取り
- 事件として扱うかどうかの判断
いきなり「取り調べ」のような雰囲気になるわけではなく、状況を整理するための聞き取りからスタートします。
子どもへの説明の仕方(不安を煽らない)
警察という言葉だけで、不安を強く感じるお子さんもいます。
伝えるときは、短くシンプルで十分です。
「あなたを守るために、大人同士で話をしてもらうだけだよ」
細かい経緯や、相手への処分の可能性まで話す必要はありません。
イジメ後の不登校や進路の考え方、子どもへのフォローはこちら
追加証拠の要求とフォローアップ
相談後、警察から「この部分の記録があれば助かります」と、追加の証拠提出を求められることがあります。
いじめ案件ではごく普通のプロセスです。
- 足りていない箇所をメモで補う
- SNSの画面を追加で保存する
- 学校から新たに受け取った文書を提出する
といった形で、少しずつ積み上げていくイメージで構いません。
今日できる相談準備
ここまで読んでいただいた時点で、警察に動いてもらうべきかどうかを判断する材料は揃っています。
今日できれば十分なのは、この4つだけです。
- 自分のケースが「警察相談レベル」に当てはまるか確認する
- 少年課・生活安全課のどちらへ行くか決める
- 最低限の証拠3点(暴力の証拠・SNSの記録・時系列メモ)をそろえる
- 今日・明日あたりで相談に行ける時間帯を一つ決める
警察は、保護者を責めるための機関ではなく、
子どもの安全を守るための強力な外部リソースです。
迷いを少しでも減らし、「一度相談してみる」というところまで動けた時点で、大きな前進です。
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